宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」はなぜ売れたのか?【マーケティング戦略についての所感】

約8年ぶりのアルバムとなる宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」
日本、アジアだけにとどまらず、全米ヒットチャートにもランクインする程、
バカ売れしています。
本アルバムは「花束を君に」「道」など
母である藤圭子の死に宇多田ヒカルがどう向き合おうとしているのか
その歌詞にも注目が集まっています。

今回、アルバム「Fantome」がなぜ売れたのか、マーケティング戦略に触れながら
私見について述べさせて頂きます。

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宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」がバカ売れした理由

チャート

なぜ「Fantome」が言葉の壁を乗り越えて
Itune全米チャート3位になるまでヒットしたのか?

それはNewタイプの「プロダクトアウト」戦略がはまったからではないか
考えます。

本作品は宇多田ヒカルが亡くなった母・藤圭子に
捧げたいという思いをこめて作られたもの
です。
言葉にならないもやもやしたものを何とか言語化して、歌詞に昇華し、
母に対して、また母になった今の自分の心からの叫びをぶつけた作品になっています。
*これはNHK「SONGS」で糸井重里との対談で語っていました。

ここで注目したいのは市場にニーズや時流、ブランディングという
従来のマーケットイン戦略を無視して、表現者としての想いを
最優先させている点
です。

市場から求められているR&Bテイストな宇多田ヒカルの音楽ではないのに
市場に受け入れられて売れている…

その理由は消費者は単に音楽を楽しむだけではなく、
音楽に付随する物語も楽しむことができるからではないかと思います。

ここでいう物語とは
「母である藤圭子の死に対して、その娘である宇多田ヒカルが
どう向き合おうとしているのか?」とか
「子が産まれ、母となり、6年の人間活動を経て見えたものは何なのか?」
といったものになります。

コンテンツのみならずコンテキスト、すなわち
物語性のあるプロダクトアウト戦略こそ、
今後のマーケティング戦略を考える上で重要な概念になってくると思います。

従来のプロダクトアウトとマーケットインの発想とは?

マーケット

ここでプロダクトアウト、マーケットインについて改めて言葉の定義を
確認したいと思います。

■プロダクトアウト…生産者中心主義
⇒作ったものをいかに売るか、主役はメーカー
■マーケットイン…市場中心主義
⇒売れるものをいかに作るか、主役は消費者
*プロダクトアウト(生産者中心主義)からマーケットイン(市場中心主義)へより引用

簡単に言うと、プロダクトアウトは製品ありきで、市場に投入する手法です。
大量生産大量消費の時代に、消費者のニーズが明らかなケースのみに
有効とされる発想と言われ、マーケティング的にも「売れない方法」
されてきました。

逆にマーケットインは消費者・市場ありきで、
顧客ニーズをアンケートなどで吸い上げ、商品化し、市場に投入するという手法です。

マーケティング的にも「失敗のない方法」ということで
”戦略はこうあるべき”と言われてきました。

では企業はすべからく「マーケットイン」を目指すべきかというと
そうは問屋が卸さないのが現実の難しいところです。

マーケットインの限界

マーケットインの発想には以下の3つの限界があります。

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■お客さん自身が自分のニーズをわかっていないことがある。
ニーズを言語化できていないので、当然アンケート結果にも反映されない。
言語化できていないもやもやしたものをくみ取ることができない。
■アンケートを寄せ集めたアイディアは概してつまらない。
面白みのないものになりがちである。
■みんな同じような市場リサーチをしているので、
商品の差別化がおこりにくくなる。

米国

実は宇多田ヒカルは2004年に「EXODUS(エキソドス)」というアルバムを
引っ提げて全米進出を図っています。
しかし「EXODUS(エキソドス)」は米国では1万枚以下のセールスに終わり、
全米進出失敗の烙印を押されています。

UTADAサイドは恐らく全米進出するにあたって、マーケットをリサーチし、
ヒップホップ調の強いアメリカ人受けする曲に仕立て上げたと思うのですが
マーケットインの戦略は実らず、アメリカ人にとっては中途半端で
差別性の薄いものになってしまいました。

逆にアメリカ市場を全く意識していない「Fantome」が
すべて日本語のタイトルにもかかわらず、全米チャートを席巻しているのは
皮肉なものと言えます。

宇多田ヒカルが「すべてを出し切った」と語っている作品になりますので
高いレベルの想念が言葉の壁を越えて伝播したと考えていいのではないでしょうか?

宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」に見る新しいタイプのプロダクトアウト戦略とは?

物語

「Fantome」に見る新しいタイプのプロダクトアウト戦略とはすなわち
「物語性のあるプロダクトアウト」になります。

「最初に開発者・表現者の信念・理念といった物語があり、
その文脈上に製品がある」⇒「製品の物語に共感した消費者がその製品を購入する」
という図式になります。

「Fantome」の場合、まず宇多田ヒカルの母への想いがあり、
それを歌に昇華したものがアルバムになるわけです。

宇多田ヒカルは実績あるアーティストなので、
彼女の歌声、歌詞に惹かれて購入したファンも多数いると思いますが、
「彼女は母の死をどう受け止めて歌にしたのだろう?」
「母になり、人間的な生活を送って見えたものとは何だったのだろう?」

と興味を持った消費者も少なからずいると思います。

従来の固定ファンのみならず、そのような新規顧客層も
歌詞に込められた物語を楽しむことができる、
これが大ヒットした理由ではないかと思います。

製造業では
「製品の機能性を追求するだけでなく、付加価値をつけよ」
言われ続けて久しいですが、付加価値の追及にも限界があるのではないかと
個人的には考えています。

今後は「製品に物語性をつけること」
差別化のポイントになってくるのではないでしょうか?

まとめ

宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」は
新しいタイプのプロダクトアウト戦略がはまった好事例と言える。

宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」がバカ売れした理由
アーティストとしての信念ありきのプロダクトアウト戦略がはまったから。
消費者は音楽だけでなく、付随する物語も楽しむことができる。

従来のプロダクトアウトとマーケットインの発想とは?
・プロダクトアウト:生産者中心主義。作ったものをいかに売るかという発想。
・マーケットイン:市場中心主義。売れるものをいかに作るかという発想。

マーケットイン発想の限界
・お客さん自身が自分のニーズをわかっていないことがある。
・アンケートを寄せ集めたアイディアは概してつまらない。面白みがない。
・商品の差別化がおこりにくい。

宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」に見る新しいタイプのプロダクトアウト戦略とは?
物語性のあるプロダクトアウトのこと。
機能、付加価値よりもストーリーを売る戦略。

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